ろきんの迷亭記

海外駐在生活をまったり楽しむ日記

村田沙耶香『コンビニ人間』(ネタバレ感想)

ここイギリスには日本のような24/7のコンビニがない。夜中に腹が空いても弁当やパンを買いに行けない。いや、日中でさえあれほどのクオリティの食事は気軽に手に入らない。

そうして、コンビニ渇望症に陥った私は「コンビニ(ほしい)人間」として、思わずこの小説に手を伸ばした。読みやすいが、深く心に残るものがあった。感想文・批評・レビューは書きなれないから、単なる要約紛いの文章になった気もする。

1. 作品のテーマ

この作品は至るところで言われているように「普通とは何か」がテーマの小説だが、より本質的には信仰・声の獲得がテーマなのだと思う。この二つの面から捉えると、普通に生きられない恵子が、内面的な声を奪われて逃げ込んだコンビニという教会で安らぎを得たが、なお異端として抑圧され、ついに自分の声の預言者として自己を確立する物語だ。

以下ではこの二つのテーマを軸にストーリーを絡めて思ったことを書いていく。

2. コンビニ店員として生まれる

コンビニ人間』の主人公、古川恵子という女性は現在36歳で、18歳のときに「コンビニ店員として生まれ」た。

彼女は、コンビニ店員として生まれる前の半生について曖昧な記憶しかない。「普通の家に生まれ、普通に愛されて育った」にも関わらず、周囲からは奇妙がられた。綺麗な青い小鳥が死んでいるのを見つけて父親のために焼鳥にしようと提案したことや、喧嘩をしている男子を止めるためにスコップで頭を殴りつけたこと、女性教師のヒステリーを止めるためにスカートとパンツを下ろしたことなどがエピソードとして自ら語られる。

恵子は合理的に行動しただけだったが、異常者としてのレッテルを貼られた。父母を含む周囲は当然この問題児の扱いに困り、どうやったら「治る」のかと悩んだ。これは病気であり、逸脱、異端、反社会性だ。自分らしく振る舞うことが周囲を悲しめていると知った彼女は、皆の真似をして指示に従うようになった。これは彼女が自らの内側の声を捨てたことを意味している。

そんな処世術のおかげで、トラブルこそ起こさなくなったものの、それで社会生活がまっとうに送れるというわけではない。自分らしさを世間から隠すだけでは、普通にはなれないからだ。依然として、彼女は理不尽でしかない唯一の基準(普通か否か)に翻弄され続けることとなる。

世界は暗黙のルールが多く複雑すぎて、どうすれば普通になれるのかを誰も手取り足取り教えてくれない。ひたすら難しいのだ。周囲からすれば、謎であり複雑で難しいのは病気である恵子の方なのだが。

そんな恵子にとって、コンビニは制服さえ着てしまえば性別・年齢・国籍と無関係の均質な「店員」になれる理想郷だった。店員に求められる仕事や所作はマニュアルやビデオによって明文化されていたから、普通の人間の真似をすることははるかに容易いと思えた。

「世界の正常な部品」としての実感を得られた彼女は、自分が新しく生まれたように感じる。大学卒業後も外の世界へは出ていかず、すでに半生に当たる18年間も同じ店で勤務している。

彼女はコンビニのために生きることで自閉的に完結したい。世界の複雑性を解明したり調伏しようなどとは考えていない。であるのに、外の世界の友人や家族は、病気の単純化と治療の慾求を常に、かつ、一方的に恵子に向け続ける。コンビニは彼女が普通になれたと思い込める場所だというのに、周囲は彼女の内在的な異常性が治癒していないことを攻撃し続ける。コンビニという聖域以外では、暴力的な構造が恒常化している。

3. 普通とはなにか

さて普通とは何だろうか。現代社会にもムラ的な同調圧力があって、これを感じ取れない者(恵子)や感じ取れても同調できない者(恵子に近い、白羽。後述)は異常者とされてしまう。

恵子は外の世界で普通になることなど、子どものときに諦めた。だから大学卒業後就職せずにコンビニという小さな聖域に留まることを決めたのだ。そこでなら普通になれると信じられたし、彼女自身うまく普通に振る舞えていると思っていた。このコンビニと他の店員たちのことを信じていた。

しかし、恵子がどんなにコンビニ店員として普通のふりができたと思っていても、彼女には感情がないから、人間としての異常性は隠しきれない。コンビニの外にいる妹からすればむしろ異常性が増していたと指摘されてしまう。

「お姉ちゃんは、コンビニ始めてからますますおかしかったよ。喋り方も、家でもコンビニみたいに声を張り上げたりするし、表情も変だよ。お願いだから、普通になってよ」 妹はますます泣き出してしまった。

子どもの頃から、恵子の行動原理は合理性だった。喧嘩の仲裁は言葉ではなく暴力でした方が早い。なぜ皆は合理的でないのだろう。彼女の合理性の頂点は、甥っ子に向けられた以下の恐ろしい独白にあらわれている。

赤ん坊が泣き始めている。妹が慌ててあやして静かにさせようとしている。
テーブルの上の、ケーキを半分にする時に使った小さなナイフを見ながら、静かにさせるだけでいいならとても簡単なのに、大変だなあと思った。妹は懸命に赤ん坊を抱きしめている。私はそれを見ながら、ケーキのクリームがついた唇を拭った。

だが、彼女が妹に気付かされるように、世間は合理性を第一の基準などには据えていない。人間はとにかく正常な状態でなければいけないのだ。

叱るのは、「こちら側」の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題は起きていないのに「あちら側」にいる姉より、問題だらけでも「こちら側」に姉がいるほうが、妹はずっと嬉しいのだ。そのほうがずっと妹にとって理解可能な、正常な世界なのだ。

そして、終盤に明らかになるように、コンビニ店員という強烈な均質化の陰に隠れていただけで、恵子は実は他の店員からも腫れ物として扱われていた。コンビニのなかで店員という役割がどれほど強度に均質化されようとも、人間の本性は均質化されずに生のままで残されている。普通の呪いは聖域のなかにも入り込んでいた。これは恵子にとって残酷な事実だった。

だが、あるとき白羽という異物の寄生を受け容れたことで周囲は恵子の病気が治ったのだと誤解する。重篤な病人の症状が回復しはじめたように見えた瞬間、それがいかに些細なことでも周囲が飛び上がるほど喜ぶのと似ている。

こうしてはじめて正常側に移れた恵子だが、いつの間にか自分がコンビニ店員以前に「人間のメス」として扱われはじめたことに戸惑う。異常側にいたときの彼女からはまったく見えていなかった、同僚たちのコンビニ店員ではない人間の側面が見え始める。現実を知っていくにつれて、彼女に生きる喜びを与えてくれた教会に流れる音は「不愉快な不協和音」になっていく。

その後信仰を失ってコンビニを辞めた恵子は、生きる基準を失ってしまい、正常な生物らしく、白羽と性交をしたほうがいいのだろうかという疑問を抱く。しかし、白羽の義妹から「あんたらみたいな遺伝子残さないでください」と罵詈雑言を吐かれる。「この義妹はなかなか合理的な物の考え方ができる人だ」と感心してしまう恵子。

どうやら私と白羽さんは、交尾をしないほうが人類にとって合理的らしい。やったことがない性交をするのは不気味で気が進まなかったので少しほっとした。私の遺伝子は、うっかりどこかに残さないように気を付けて寿命まで運んで、ちゃんと死ぬときに処分しよう。そう決意する一方で、途方に暮れてもいた。それは解ったが、そのときまで私は何をして過ごせばいいのだろう。

これほどまでに自分の感情を持たない人間がいるのだろうか。この優生学思想のような激しい意見によっても彼女が心理的にダメージを負っていないからこそ、むしろ読者のこちら側が傷を負う。そんな痛々しい場面だ。

4. 私という人格

人格や性格は遺伝だけではなく、環境によっても形成されていく。恵子の場合、自分の周りにいる同僚の声色や言葉遣い、服装・髪型・小物づかいなどを要素として抽出して、それぞれを組み合わせることによって「私」を作り出している。自分という器に液体を流し込んで「私」が出来上がる。

恵子にとってはとりわけ喋り方のコントロールが重要だ。喋り方というと、我々も意識的に声を落ち着けたり、陽気さや軽やかさを加えたりといった程度の操作をすることはあるが、恵子はなにか言葉を発する前後で誰と誰の喋り方を配合するのかを考えてしまう。今の言い方は店長に近かったな、などと。他人の声のエミュレーターのようになってしまっているのだ。

ロボットが学習できるように、無機質な人間にだって喋り方くらいトレースできる。だが、無断で仕事を辞めた人間に怒ったり、子供をみて子宮を共鳴させたり、恋愛したりすることはできない。もちろん、怒った人の言葉をトレースして怒ったフリだけはできるし、子供を作ろうと思えば白羽と性交するし、恋愛している風に周りは解釈してくれる。

だから、恵子には真似をする機械として生きる道は残されていた。子供さえつくれば、普通の人間の仲間の大きな要件を満たすことになるから。だが、その先も普通らしさを求める攻撃は永遠に止まないだろうし、そもそも劣った人間は子供など作らないでくれという「合理的」な意見に首肯した彼女にこの選択肢はなくなる。

さて我々と彼女との差異は、境界はどこにあるのだろうか。恵子からすれば、みんな誰かの受け売りの癖や仕草をしているのに過ぎず、新しい環境に変われば古い癖や仕草は流れ出して変わってしまっている。そうやって環境によって形成される人格には、完全なオリジナリティなど存在しない。

ルールが分かりづらいだけで結局は均質化されているでしょ、そう言われているようだ。自分というアイデンティティが揺らいでいく。恵子の視点からは、普通の人々は想像力が乏しく、極めて退屈に描かれる。これが普通なのだと自認できれば、平然と生きて異常者を排撃できてしまう……。

18歳のときから、恵子のアイデンティティはコンビニになった。自己のすべてをコンビニに最適化していた恵子がコンビニを棄てるということは、信仰を捨て、生き方を忘れてしまうことだ。体毛を剃って身だしなみを整えることも必要なくなり、髭すら生えてしまう。シャワーも三日に一度。何時に起きたらいいかもわからない。生きる目的がなくなる。

5. 白羽という寄生生物

物語の中盤、白羽がコンビニに雇われる。恵子は白羽が自分と同類であり、しかしコンビニにとっては異物であるとすぐに気がつく。店員たちの声がけの練習を「宗教みたいすっね」と揶揄し、均質化を拒絶し、性格は好戦的で、コンビニで働く人が負け組だとして差別感情を露骨に表す。

コンビニは「強制的に正常化される場所」だ。異物は容赦なく排除される。そう彼女が予想した通り、客の女性にストーカー行為をした彼はすぐにコンビニから異物として排除された。彼女からすれば、異物とされないための処世術は単純明快だった。

「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じですよ」

白羽という男には他者憎悪と自己卑下が混じっている。自分も童貞で無職というのに、処女だの子宮が老化しているだのと、女性差別の言葉や口汚い罵倒を平然と恵子にぶつける。彼女に世話になっておきながら。どんなに差別的な言葉を言われても怒りの感情が沸かず冷静な恵子からすれば、世界に対する強烈な嫌悪感をいだきながらも、その世界の価値観に拘泥して苦しんでいる彼の生き方がまったく理解できない。

彼は誰にも干渉されたくないといって、恵子に寄生する。恵子は白羽をアパートで飼い、この寄生生物を取り込むことによって、周囲から病気が「治った」ことにされた。これは彼女にとって都合がよかった。恋愛をしているという風に勝手に解釈してもらえるから。

だが、二人の奇妙な関係はすぐに終わりを告げる。 白羽は、人間としての恵子には都合がいいのだが、コンビニ店員としての恵子には「まったく必要ない」のだった。白羽は恵子という寄生先を必要としているが、恵子はコンビニを選ぶ。

不要とされた白羽は恵子を罵ることしかできない。払われた害虫のようだ。宿主から捨てられてしまえば、彼は野垂れ死ぬしかない。恵子はコンビニを信仰しているが、キリスト教の隣人愛のような物語は流れていない。このコンビニ信仰は恵子ただひとりだけのために存在することがわかり、物語は終わる。

彼は恵子が知らなかった普通のルールを熟知していた。どう行動すれば普通になれるか分かっていたのに、その通りの行動ができず(ストーカーもそんな逸脱の一つとして象徴的だ)、落ちこぼれた彼は、早々に口を噤んだ恵子と違って、恨みによって口汚く社会を呪い続ける寄生虫となってしまった。

彼は立場的には恵子の病を治せたはずだった。恵子と形式的に結婚して、子どもをつくればよかった。その治癒を阻害したのは何だろうか。女性蔑視だろうか。単に恵子に魅力がなかったのか。いや、彼の寄生生物としての覚悟が足りなかったのだと思う。自分が生存するためには宿主をうまく操らなければならなかったが、彼からすれば、恵子は宿主としてやはり異常な存在で、手に余ったのかもしれない。

6. 音の器と信仰

子どものころに自分らしい言葉を発しなくなった彼女は、声を持たない器である。「小さな光の箱」であるコンビニの音は、器である彼女に心地よく流れ込む。物語の書き出しも以下のように始まる。

コンビニエンスストアは、音で満ちている。

コンビニは神聖な世界だった。入店者のチャイム音は「教会の鐘の音」に聞こえ、彼女は「光に満ちた箱の中の世界を信じている。」必死の声がけはコンビニへの「祈り」なのだった。

コンビニに音が満ちるのは、空っぽの彼女のなかに音が満ちて音楽が鳴るということだ。眠れない夜にも、コンビニの店内の様子を思い浮かべると、安心して眠れた。異常者として迫害されている彼女が生きていけるのはコンビニの音が自分の身体で鳴っているから。

その音楽は、彼女が正常な側に近づいたせいで「不愉快な不協和音」になってしまう。さらに、恵子がコンビニを辞めて就職活動を始めたとき、肉体は変調をきたし、耳の中でコンビニの音が鳴らなくなってしまう。コンビニの音が身体から消えることは、彼女が寄るべき世界から切断されたことを意味した。一時的に信仰を失った証かもしれない。

しかし、最後のシーンで彼女のもとにまたコンビニの音が流れ込んでくる。いや、今度は音ではなく、声となって。声となったのは彼女が捨てたはずのアイデンティティと一体化したということだ。

 私にコンビニの「声」が流れ込んできた。
 コンビニの中の音の全てが、意味を持って震えていた。その振動が、私の細胞へ直接語りかけ、音楽のように響いているのだった。

世界から切断されていた彼女は、預言者としての自覚を得たかのように人生を自分の手に取り戻す。かつて恵子の言葉は合理的すぎて反感を買い、恐れられた。だが、その身体はこれから先コンビニに奉仕するための道具となる。揺るぎないアイデンティティ、普通であろうとする必要はもうないし、口を噤む必要もなくなった。封印された呪詛の声は、福音の声となって帰ってきたのだから。

結末部は、彼女のなかに音楽が満ちて、共鳴する様を描いて終わる。一曲の宗教音楽を聴いたかの感がある。「私とよく似た明るい声」というのはあくまでも自分自身の内在的な声(本源的自己)ということだろう。これは、神などの外部の声ではない気がする。店の商品の配置などというコンビニのための「合理性」、すなわち自分らしさが、コンビニという教会を媒介して自らに語りかけてくるようになったのだ。

私は生まれたばかりの甥っ子と出会った病院のガラスを思い出していた。ガラスの向こうから、私とよく似た明るい声が響くのが聞こえる。私の細胞全てが、ガラスの向こうで響く音楽に呼応して、皮膚の中で蠢いているのをはっきりと感じていた。

もう誰かの喋り方を真似する必要はない。自分の声をそのまま発すればいい。教会という肉体を媒介して自分自身の内なる声を聞くという、ある種自閉症的な完結。とても美しい。

彼女の人生は充実するが、発展はまったく見込めない。固定化されたのだ。殉教したともいえるかもしれない。

7. 最後に

はじめに書いたように、この作品では信仰・声というのが重要なテーマだと思う。宗教的なモチーフがいろんな箇所に置かれているのは敢えてだと思いたい。

大きな物語がなく、消費的・慾望的に生きている我々の孤独や不安は、コンビニのような極めて世俗的で大衆的な生活のどこかに信仰を見出すことで解決されるのかもしれない、など思ったりもする。

普通とはなにかという表のテーマに従うだけでも楽しく読めるのが、この作品の良さだと思う。この作品はユーモアがあって、笑えるというのも素晴らしい。例えば、からあげ棒のシーンや結末だ。恵子のコンビニへの信仰が狂信として表現されているときに、とくにユーモアが増大する。

これは幸福な物語だというのが私の理解だが、白羽を含む恵子の周囲の正常な人の価値観からすれば、病気を治せなかった女性がコンビニという狭い世界に逃げ込む悲哀の物語でもあるだろう。この手放しで喜べない二面性もこの小説の魅力かもしれない。

日本語のこと: 「に」or「へ」

最近、ある部下のメールをいくつも書き直していてふと気がついたことがある。助詞の「へ」を「に」に直すことがあまりにも多い。もちろん「へ」が適切でないと感じたからこそ修正したわけではあるが、同時に、自分のなかでこれらの違いがはっきりしていないことにも気がついた。

さて、ざっと調べた限り、「へ」は方向を示し、「に」は到達点を示すという。 例えば、

  • 東京行く。
  • 東京行く。

この二つの文を並べたとき、一文目は「東京辺りに」・「東京の方角へと」という広がりのニュアンスがある。フォーカスしているのはある方向へ向かって進行することであって、結句どこに到達するかは判然としていないともいえる。一方の二文目は文字通り「東京都に」入るために行くことがはっきりとしている。

この二者は入れ替え可能だし、日常ではどちらを使ったところで意味内容からして大した問題にもならないが、冒頭のメールでは「へ」ばかりが頻出したために不適切と感じた。彼女はまったく「に」を使わない。「へ」で突っ張るスタイルだ。しかし、「へ」は漠然としている。例えば、

  • 当該書類は〇〇日までに弊所より目黒税務署提出いたします。
  • 当該書類は〇〇日までに弊所より目黒税務署提出いたします。

文単体だけでみると大した差はないかもしれないが、「へ」は提出先が曖昧だ。目黒税務署の方に出すが、風向きによって日本橋税務署に届くかもしれない。というのは言い過ぎとしても、提出先は100%目黒税務署だという確固たる意識が足りないようにみえてしまう。提出先というのは法令などで明確に指定されているのだから、ピンポイントで目的地を指し示す「に」でなければいけないだろう。

これは一例に過ぎないが、「へ」or「に」いずれが相応しいかという問題はここに帰結すると捉えていいと思う。結果を担保すべきプロフェッショナルの文章には「へ」はおよそ不適切であって、あえてぼかしたい特殊な理由でもない限り「に」を使うべき、というのが今のところの僕の考えである。

ネイティブの英語が聴き取れません(2022年の抱負)

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かつては毎年目を輝かせながら目標を練り上げていた僕も、この歳にもなると新年の目標について卑屈にもなってくる。 2021年は生きてイギリスにやってきて、餓死せずに生き延びた。それだけで充分なのだ。事実、神経を多少病んだが、肉体は一応支障なさそうに見える。 渡英当初には英国内のコロナも落ち着いてきていたから、周囲も「好いタイミングで来たね」と言ってくれた。しかし、気がつけば過去最高記録を突破するサイクロンに巻き込まれた。オミクロンの神輿に担がれてワッショイワッショイ突き上げを喰らいながら、ダージリンを日々すすっている。

2021年に自分を甘やかしたのは、当初英国での理想の自分と現実のギャップに苦しんだ挙げ句、「海外で暮らしているだけ天才」と思うことにしたからだ。そうしてハードルを地面すれすれまで下げたおかげで精神衛生が保たれた。2022年は本気出す。今回は英語の抱負。

英語 – リスニング

さて、とにかくリスニング力が足りない。これはどれだけ強調しても足りない。IELTSでL7.0しかないので本当に苦労する。気分を害してしまったら申し訳ないが、本当に7.0でもまだ危険水域に肩まで浸かっている。日常会話を含めたコミュニケーションが非常に難しい。もちろん1対1では喰らいついたり聞きかえすことができても、ネイティブ同士が私の許可を得ずに勝手に話を始めると、ふわふわと居場所が溶けてなくなっていく。アァ、アァ……。特に友人や家族同士など砕けた雑談の場になると、諸事情により理解できる割合が1-2割くらいまで低下する。

もちろん持ち合わせのコミュニケーション能力が高い人ならこちらからのスピーキングである程度カバーはできようが、そんなもの持ってませんアタシ。この耳は赤子並みと痛感する。いや赤子のほうがよほど優れた耳を持っている。なお、英検1級のリスニング教材はほとんど正解できるし、ニュースなどは集中すればだいたい意味は取れる。しかし、現実世界の水準はまるで異なる。サイバイマンを倒せてもナッパやベジータには敵わないというあの絶望感。

何よりも聞き返したときの「なんで聴き取れないんだよ」というしかめ面は悪夢。

1. 目標

とはいえ、いくら嘆いても英語は聴こえてはこないので、重点的なリスニング対策を以下の二本立てにてやります。また、聴き取れない部分をちゃんと潰すということを今までは面倒くさがってやっていなかったので、やるぞ。

  • 初見で英語字幕禁止プレイ(Youtube/映画/ドラマ)
    まず初見で50%くらいは聴き取れる動画を字幕なしで観て、二回目は字幕ありで観て、最後に字幕なしで観るというもの。ただし、映画やドラマは長いので繰り返すことはさておき、まずは字幕なしで楽しむことを優先する。

  • 変換マッスル鍛え上げ
    こちらはある程度聴き取れるものを使って、音声情報を意味に変換して内容を理解する速度を上げる練習。Audiobookだけで本を読めるようになりたい。

2. 英語が聴き取れない理由

また、前提として英語が聞こえない理由と対策を自分流にざっくり整理してみた。仮説的なので違っていたら修正していきたい。

  • 音声学的ルール: リダクションやリエゾンといったルールによって音声が変化したときに認識できない。例えば、What do youがWhaddya になるというようなもの。
    –出会う都度叩き込むだけなので単純。

  • 認識できない語彙: 音声からその単語を認識できないか、その単語自体を知らない。スラングや方言なども含む。
    –語彙を増やすとともに、実際の音声で出会うことにより音声と単語を繋げていく。

  • 不慣れなアクセントや不明瞭な発音: 標準的な発音からの乖離によって認識できなくなる。現実の会話では不明瞭な音声も多い。
    –周囲にアクセントの強い人がいないのでアクセントは後回し。不明瞭な音声は対策法が分からないが、明瞭でも聴き取れていないのでそちらを優先。マンブリングは、、、そいつが悪い!!

  • 変換速度不足: 音声情報を意味に変換して内容を理解する速度が間に合わない。なお、日本語に変換してはいけない
    –実は遅い音声で音だけは聴き取れたとしても、充分な速度で頭の中で意味を形成できていないことに最近気がついた。Audiobookのような遅めの朗読で音声だけで内容を理解しようとしてもすぐに心が折れて上の空になってしまう。これは英語に限らず聴覚のみでの意味理解力が低いことが原因なのかもしれないが、それにしても英語でのこの能力が低すぎるのでどうにかしたい。これは字幕やスクリプトを見ずにほとんど聴き取れる音声や動画をたくさん聴いたり見たりしてみる。

  • 予備知識の不足: 話者間で共有されている文化や話題の前提知識が欠けている。
    –仕方がない。時間をかけて少しずつ吸収していくしかないし、自分が知らない話題だったら日本語だって「それどんな人の話?」と訊くわけだから、当然だ。問題はやはり、それを訊いたところで聴き取れないことのほうだ。

  • 映画・ドラマ:
    –ネイティブの通常の会話と映画・ドラマとで何が違うかは正直謎。ネイティブの英語が全く問題なく聴き取れても映画・ドラマが全然聴き取れない人がいるらしいので、映画・ドラマのほうが難易度は高いのかもしれない。

英検1級の勉強方針、考えた

英検1級の勉強方法を色々と考えてみました、というお話。

1. 語彙

まず語彙を固める。5年くらい前にパス単を1周はしたので1割くらいは頭に残っているはず。ただ、素直にパス単を使うのが定石とは思うものの、日本に書籍のパス単を置いてきたので手元になく、UKで買い増すのも癪だしKindle版を買うのもね……。そもそも日本語訳を覚えるという作業が結構苦痛だったんですよね。ということでいきなり変なこと始めますが、パス単のリストに従って英英辞書で覚えるやり方を試してみます。失敗だったら普通のやり方に戻します。

語彙用に使うのはCollins English Dictionary Essential Editionです。これはネイティブ向けの辞書なんで発音記号が載ってないんですが、イレギュラーなやつには発音記号が付いているのでそんなに実害はないと思われます。簡潔なのが良くて、例えば、

"abhor: to detest utterly"

というようにシンプルに言い換えられているため、英語でパラフレーズするできる語彙が身につき易いかもなと想定しています。

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ただし、学習用辞書と異なり例文が全く足りないですね。でも正直今までの単語学習では語彙を一発目に入魂するときにコロケーションとかまで欲張ると挫折しやすい気がしたので、コロケーションはいったん無視します。そもそも、もっと基礎語のコロケーションが足りてないです。その辺りは語彙の第二弾でやるのとライティングの学習過程で鍛えます。あとはAppでOALDを買ったので、例文や音声は補足可能。

他にもIdioms/Phrasal Verbs辺りは実需があるのでやりたいですが……。

とにかく、最初の1ヶ月でパス単の2,400語のうち9割を覚えるのが一番手。出た単とか他の単語集もやりたくなる慾がありますが、欲しがりません。"Word Power Made Easy"のKindle版が200円だったので買っちゃったりしてますが、手を出さないように我慢。

2. 過去問

単語を覚えた段階で旺文社の過去問集を解くのが定石のようです。Kindle版を購入しました。2ヶ月目から取り組む予定。旺文社やジャパンタイムズは電子版を出してくれているのでとても助かります。

使い方は、まず時間を測って解いてみる。その後、リーディングは精読し、返り読みなしですらすらと理解できるようになるまで読み込む。リスニングはスクリプトを精読し、シャドーイングをする。辺りの模様。今までの学習では一回読んだら終わり、聴いたら終わりを繰り返していたので効率悪かったんだろうなぁ。

3. その他

上記の2つだけをやれば英検はクリアできるという噂ですが、語彙をやって過去問を解く流れに並行して分野ごとに掘り下げて対策を練りたいと思います。

  • リスニング: 太古の昔より苦手とされている分野。大嫌い(さっきのabhor)といっても過言ではない。今もイギリスで苦労しているのはリスニング。雑談のなかで聴き取れないとクスリとさせるような小洒落たギャグも言えずぴえんなのです。とりあえずジャパンタイムズのリスニング本で分野対策をします。その後はPodcast聴いたりシャドーイングですかね。リスニングは本当にガッツリ伸びた成功体験がないので不安です。

  • リーディング: 一番得意な分野。IELTSでもこれだけ9.0と突出していたので自信あり。あんまり特別な対策は要らないかなと思いますが、勉強というより趣味でThe Economistを読むようにします。The Economistを読もうとしてる税理士は稀少じゃね?? という謎のイキリに端を発してもう4年くらい購読だけしてお布施し続けているんでね、ここらで回収しにかかりますよ、投資を。音声も聴けるからシャドーイングもしたりすればしゃぶり尽くせるのではと企んでいますが、コンフォート・ゾーンに嵌まらないように自制もします。

  • ライティング: 今までガチで全くやっていなかった分野。昔の大学受験でもほぼ無視したな。準1級も単語並べれば行けたし。でも文章書くのは好きな人間なので、ライティングは伸び代ヤバみだと自分に期待してます。こちらもジャパンタイムズで鍛えます。まずはテーマごとの212の短いパラグラフブロックを写経します。自分なりに書き換えられるなら書き換えます。最後にテーマごとに30問の問題があるので、自分の立場に合わせて3つの理由を挙げてすらすらーっと書けるように準備します。「真似はだめ」という致命的な先入観がライティングしたくない病の原因だったので、とにかく他の人の英語・フレーズをパクリまくるようにします。

  • スピーキング: オンライン英会話、DMMの1日2回受講のコースを申し込んだものの、2ヶ月でまだ数回しか受けてないので解約しようと思います。こういうのほんと続かないの。The Economistといい、ほんとサブスク被害者の会作りたいくらい。スピーキングは別に毎日やる必要ないな、って気づいたんだぜ。いや、単に怠け者なだけですすみません、というか真面目な話、何となく英会話して回数を重ねても何も得られないのは感じました。事前準備と復習が非常に重要だと気づきました。ライティングの勉強で自分の考えを英語としてプールできるようにした上でオンライン英会話をやるのがいいかなと思いました。

  • 文法: Advanced Grammar in Useちゃんが横で寝ているんですが……、起こさないようにします。基礎はOKと思うんで、文法は優先度めちゃ低め。

  • 発音: これは完全なる趣味ですが、EPTという発音テストの結果が来週返ってきます。1箇所基本語の読み方を間違えるという失態を犯しましたが、割と良い線行っていると勝手に思っています……。ちなみに元々アメリカ英語で勉強していたんですが、英国で3ヶ月過ごすうちにイギリス英語ぽい発音に移行してきました。pick upというやつです。

  • ツール: ライティングのフレーズ集とかは、紙のノートではなくNotionというアプリでまとめようと思います。

英検1級を受けたいやつ、おれ

なんとロンドンでは、TOEICは受けられないくせに、英検は受けられるのである。まーどうせTOEICはまだ満点を取りに行く力は備わっていないので、いいのさ。

ということで英検1級を受けようと思い立つ。目指すは2022年1月。あと3ヶ月。実はケンブリッジ英検も受けたいと先々月くらいに(思うだけ)思ってテキストを買ったが、早々に放った。英検を先にやるほうが効率的とみた。

むかしのブログを見たら、英検準1級は税理士試験の合格発表待ちの間に取っていたようです。そのときに1年後くらいに1級も取りたいとか猪口才に言っていたが、無情にも6年以上の時が流れた。ほんとに早いですね……。

今勉強したいことは英語・データサイエンスもどき・ATT(英国税理士)の3本立てなんですが、取り急ぎ英語を軌道に載せようと思います。データサイエンスもどきは、会社の研修コースとして用意されているRPAを学ぼうと思っています。とりあえずUiPathをインストールしただけ。ATTは業務に直結するんでさっさと一科目やりたいんですが、スクールに連絡したものの何か色々時間がかかっておるのです。

ACCAは13科目中3科目を取っていったん休止したんですが、ACCAや税理士試験などはブログに記録を書くことで士気を上げるということができていたので、これにあやかって英語もブログに書きながらやっていこうと思います。ブログに書くことでやる気も上がるというよりは、やる気が溢れていたからブログを書き散らしていたんじゃないかという疑念は置いておきます。

さてさて、なんせ英語は今まで体系的にガッツリ勉強したことがなくて、趣味的に読書したり単語を覚えていただけなので、今回の英検1級では4技能を真面目に伸ばしに行きます。準1級は多読と英単語で何とか乗り切れちゃったので、自分のなかで英語の勉強方法を確立できてないのが悩み。

ってか、たった3ヶ月で合格できるのかって思うじゃないですか? 大丈夫、

f:id:Shivalak:20211017092629p:plain

2ヶ月で合格できるらしいwww

こういうのは当てにしない人間ですが、色々調べて語彙・リーディング・ライティング・スピーキング・リスニングそれぞれのやり方を考えて臨もうと思います。

ほいではCheers!

ロンドン到着の日のこと

東京を出発し、ロンドンに到着してからもう1ヶ月が経ってしまった。 色々アウトプットしたいと思いながらも、初めて暮らす異国で気もそぞろがちに、いつの間に時間がだいぶ過ぎた。

1. フライト

7月2日は梅雨の朝だった。そんな日に僕は大量の荷物を全身で引きずって羽田空港へ向かう。 大量というのは、背中にバックパック、テナー・サックスと電子サックスを左右の肩にかけて、でかいスーツケースを一つ。ちんどん屋のなりそこないだ。最寄り駅で、反対側のホームに移動するために階段を上り降りしただけで心がバキバキに折れた。この多荷物には今に至るまで悩まされている。

見送りに来てくれた家族と最後の会話を交わして、超過重量のために1万円をJALに支払い、ロンドンへの直通便に乗り込んだ。CAさんに「楽器ですか?」ときかれて得意げに「サックスです」と答えたときだけ重い荷物を運んできてよかったと思えた。その人はたしかフルートを演奏するとか。幸いなことにプレミアムエコノミーだったのと席が空席だらけで、すぐ後ろの親子連れを除いて周囲15席くらいに誰もいないという快適な空間だった。これなら12時間のフライトも窮屈にはならない。しかも僕は事前に徹夜をして眠気MAXだったので、あっという間に着いてしまうさ。

ついに単身で海外に飛び出すこととなって、感極まったのだろう、フライトの間中メモとペンを座右に置いて、目が覚めるたびに、何か思いつくことを書き散らした。あとから読み返すと色々なエモみが去来していて面白い。まずは、親父が癌で病床にいたときに「最後は家族だ、愛だ」と云っていたのを思い出した。死の淵とか酩酊して前後不覚でないとそんな台詞は吐けないが、今もって尊いと思う。死という「今生の別れ」も洋行も、別れの場であって、そこに駆けつけてくれる人は家族であれ友達であれありがたい。それだけに別れのさみしさもひとしお。

ランチを食べたら少し楽しい気分になった。Ubereatsばかりだった僕には機内食のほうが百倍健康的で好い。Promising Young Womanという映画を観る。とある事件を機に医学部をドロップアウトした女子の復讐譚。タランティーノっぽいレトロなスタイリッシュさを狙っているような。冒頭やラストの淫乱女感と純粋な復讐の動機とのギャップに惹き込まれる。

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映画自体は面白かったが、終わった途端に虚無感に襲われた。今はドバイ辺りだ。何でおれはこんなばかげたことをやっているのだろうと。日本の税務の知識や経験がそのまま活かせない、武器のない海外にわざわざ飛び込んでいくなんて、よく言えば仕切り直しだが、身につけたものをうっちゃるようで愚かだ。とはいえ、しょせんおれなんぞは事務所から出向で短期間派遣されるだけだ。文字通り裸一貫で海外に挑んで一旗揚げようという人はすさまじい。身一つで海外に飛び立った人々やこれから飛び立とうとする人々はその勇気だけでも尊敬に値する。

とまぁそんなことを考えているうちに今度は冒険的なポジティブな感情が湧いてきて、ようやく心が均衡を取り戻した。Judas and the Black Messiahという映画を観る。Get Outに出ていた二人だ。The Black Messiahの演説などの熱演も惹き込まれたが、どちらかというと弱くて人間味のあるJudasの方に感情移入した。映画などで描かれる偉人像は則天去私のような超然とした精神世界に到達してしまっていて、それはそれで魅力だし、ブラック・ジーザスなので神々しくあるのが当然ともいえるけれども……。どこかに弱さがあってほしいと思うのかもしれない。ユダを排除しなかったことはキリストの強さだろうか。

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いま振り返ってみると2つの映画はどちらもシリアスな内容で、このときはもっと楽しい映画を観るべきだったと後悔。

いつの間にかアムステルダムを超えていて、降下のアナウンス。時計をロンドンに合わせる。梅雨の東京を遠く離れて旅の幕開けを知らせるつゆ払いの儀式。これが楽しい。無事に着陸した機内から眺めると、曇りがちだが晴れ空のヒースロー空港が待っていた。

Arrivalsで長蛇の行列。1時間ほど待たされたか。僕の前に並んでいたナイジェリア人の老紳士に「妻が来るんだが入れていいか」と訊かれてNo problem.と答えたのが、英国において発した記念すべき最初の英語である。Passenger Locator FormやPCR陰性証明書などを準備していたが、日本は優良国の一つらしく、パスポートを機械にかざすだけで入国できた。あっけない。みんな電話しているなあ、電話が好きなんだなあという印象。

2. ヒースロー空港から滞在先へ

1万円以上するタクシーで行くのをケチって、Oyster Cardを購入して地下鉄で向かうことに。覚えたばかりの単語をピカデリーラインで見つけて喜ぶ。"retch"というのは吐き気を催すという意味。 f:id:Shivalak:20210803052915j:plain

その後乗り換えのときに階段を昇降しなくてはならず、タクシーにすればよかったと悔いたがすでに遅い。 なんでエレベーターやエスカレーターを完備しないんだ!と嘆いていたら、後ろから女の子が「持ちますねっ」みたいなスーパー爽やかさで手伝ってくれました。女の子に助けてもらうのはなんだか情けない気もするが、これをかついでちんどん屋をやっていたから仕方がない。 f:id:Shivalak:20210803053811j:plain

出向先(UK)の事務所に用意してもらった宿に着いた。いくつかの選択肢からとてもおしゃれで快適そうなホテルを選んだのだが、正解だった。ホテルの部屋にキッチンが付いている。部屋の窓からはテムズ川が見えた。 f:id:Shivalak:20210803053244j:plain

爽快な展望だなと思う一方、水、汚えなというのが感想だった。 その昔、「隅田川の水はテムズ川に通ず」と云った人がいるらしいが、道理で納得した。隅田川の汚さがここにたどり着いたのか、テムズ川のせいで隅田川が濁っているのか、互いに汚れを高めあっているのかは知らない。

3. 事件そして暗い部屋……

そんなことを考えながらiPadを充電しようとしたら、「バチバチ」と猛烈な音がした。すぐ焦げ臭い匂いがしたのでまずいと思ってコンセントから抜く。実は日本から持ってきたタコ足ケーブルを変換プラグをかまして使ったのが悪かったらしい。その後別のコンセントで充電しようとしたが充電される気配がない。おかしい。iPadがおかしいのか、なんだろう……。あれ、明かりもつかないぞ。 ああ……ブレーカーだ。

ブレーカーが落ちていることをフロントの女性に伝えに行く。しかし何ていえばいいかわからない。スマホローミングを切っているし、ブレーカーとともに部屋のWiFiも死んでいるから、調べられなかった。とりあえずジャブ代わりに、"The breaker is down."と言ってみる。出川レベルの直訳なのに、出川には到底及ばない発想力。

"What????"

そりゃそうだよな。ちょっと試しに言ってみただけだから。女性の後ろにいたにーちゃんも、素っ頓狂な奴がいると思って参戦してきた。一言では伝えられなかったものの、充電しようとしたらboomだぜ!みたいな経緯を説明したら分かってくれたけれど、いままで何を勉強してきたのだろうという気にもなった。後で調べたらこう云うべきだったらしい。

The breaker (has) tripped.

しかし、スタッフと一緒に部屋に戻ったが、肝心のブレーカーが見当たらない。挙げ句の果てに「メンテナンスマネージャーが週明けまで来ないから分からない。空いている部屋があるからそこで良ければ移る?」と。外は薄暗くなってきているし、断る余地はない。

そして移動した先は、暗い。最初の部屋は縦長だったが、こちらは真四角なので間取りはこちらのほうが断然好いが、暗すぎる。窓はあるが、細かい格子があって光が全然入り込まない。テムズ川は見ようと思えば見えるが、この模様があっては景色を楽しめたものではない。きっとテムズ川を汚いと罵倒したバチがあたったんだろうな。こうして、朝っぱらから夕方までホテルの前からテムズ川沿いにジョギングで抜けて行く人々を部屋からさもしく眺める日々が始まった。 f:id:Shivalak:20210803060940j:plain

ACCAの勉強方法その1: Applied Knowledge 3科目を1ヶ月でパスするのに必要な勉強

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昨日、ACCAの3科目目を受験して無事合格しました! これで、ACCA基礎科目制覇、フェーズ1完了です。

5月に思い立って1ヶ月ちょっとで3科目取れたのは快挙じゃないですか!(ドヤ)

(6月からは有給消化中なので、MAは専念みたいな状況でした)

FAを受けたときに試験監督のおっさんが「来週MA行けるやろ」とか言うから試験日前に徹夜する羽目になったわけですが……。

ちなみにそれぞれこんな点数でした。勉強時間は面白いことに(というかキャップを設けていたんですが)ほとんど50hずつです。

  • 5/22: Business and Technology (BT) 77%
  • 5/29: Financial Accounting (FA) 80%
  • 6/6: Management Accounting (MA) 76%

毎週受験しているので、東京ドーム前の受験会場の狭い事務所に入って試験部屋を覗くといつものおっさんがいる景色。
"Hi."
"Are you ready to start?"
って感じでゆるーく試験が始まります。

ここまでのところ、勉強は楽しくできています。ゲームのクエストをクリアしていく感覚に非常に近いなと思います。もちろん、最初の基礎科目だからそんなこと言っていられるだけな気はしていますが……。 

さて、ACCA(英国勅許公認会計士)は、13科目というステップの多さや日本での知名度が低すぎるというだけでなく、USCPAに比較して日本語で書かれた情報が少なすぎるのが悩みですね。勉強を始める前後では、情報収集や勉強手段の確立にかなり手間がかかりました。ACCAの公式サイトは情報量が多すぎて苦痛ですし……。

そこで、今回は鉄板のACCAの勉強方法・学習ツールをまとめてみました。 もちろん僕はまだ3科目しか受けていないので、基礎科目だけの話です。

僕のACCA受験ポリシー

ポリシーというと大げさですが、自分なりの基準です。

時間をかけすぎずにできるだけ効率よく合格したい!

なので、予め勉強時間の目安を決めて、仕上がり具合と相談しつつ早めに試験日を設定していました。仕上がりは完璧ではなくて、結構自信なかったりします。精神にあまりよくありません。

じっくり学習して知識を定着させて自信を持って合格していきたい方には適さないので、ご了承ください。

 最強の勉強方法はあるのか

2021年現在、日本語で教えられているACCA講座で定評のあるものはまだありません。残念ながらUSCPAのA校のような存在はないのです。 この状況がほんの10年で変わる可能性もありますし、2200年になっても変わっていないかもしれません(むしろ、日本や日本語がなくなってる可能性もあるな)。

先に結論を書くと、後述の通り最強はOpenTuitionでインプット + 問題集(BPPなど)でアウトプットです。理由はコスパと効率性ですが、色々試した内容を以下で説明します。

1. OpenTuition

https://opentuition.com/

Redditなどのコミュニティでもよく「おいどうやって勉強したらいいんだ?」という質問が出てくるんですが、間違いなく挙がっていたのがこのOpenTuitionです。

無料なので、受験科目のテキストと動画を見てみて、合わなそうだったら別の手段を探すのがいい気がします。つまりACCA受験生は、OpenTuitionを使った奴と、使ってない奴だけ(当たり前ですが)なわけで。要は、勉強方法のフローチャートの一番目です。

概要/Pros

  • 講義テキスト(PDF)をダウンロードして、講義動画(Youtube)を見ながら学習するスタイル(組み合わせが前提)
  • モジュール制ではないので、クリックしたりスクロールしたりというまどろっこしいアクションが要らない
  • テキストがPDFのため、印刷してもよし、iPadなどのタブレットに入れるのでもよし
  • Youtube上に動画が上がっているので、自動生成の字幕(英語)を利用できる
  • 講義の合計時間はApplied Knowledgeの科目だとせいぜい20時間程度と短いため、インプットを早めに終わらせて演習に進められる
  • 各チャプターの復習問題やMock Examがある
  • 講義や復習問題のページの下部にそれぞれコメントを書き込めるので、関連する質問と公式の回答を簡単に参照できる
  • 完全無料

Cons

  • ACCAのシラバスは網羅しているが、必要最低限というコンセプトなので、インプット自体足りない部分がある
  • アウトプット(演習)が圧倒的に足りないため、これだけではまず合格できない
  • モジュール制ではないため、遊び心がなくて地味で退屈で眠くなりやすいかもしれない
  • 自分で進捗を管理しなければならない
  • 英語のしゃべり(しかも講師によってはアクセント強い)という最大の難点。自動生成字幕があっても、日本語字幕ではないので、僕のような純ジャパにはつらい
  • マイクの質が悪くて音が良くない(上記とあいまってつらいです)
  • 講師がおっさんとおじいちゃんONLY

箇条書きでまとめましたが、こんな感じです。 チャンネーの講義が聴きてえ輩には向きませんが、英語のリスニングさえなんとか乗り切れば、他のConsを問題集でカバーして、最強に至ります。

僕の場合リスニングの理解度は5割くらいな気がしますが、どうせ問題集で補正できるので、なんとかなります。

ちなみにOpenTuitionのLWのおじいちゃん先生はギャグを入れたりして面白そうなんですが、スコティッシュアクセントが強すぎて僕には厳しいです。

2. BPP, Kaplan (出版)

https://learningmedia.bpp.com/

https://kaplanpublishing.co.uk/

BPPとKaplanはACCA公認の教材出版社のため、テキストや演習のための問題集を買う際は必ずこのどちらかの出版物を選びましょう。 どちらも高品質なんですが、OpenTuitionが推している(20% discount)のもあって、僕はBPPを使っていました。デザインもオシャレだし、このライオンもなんかかわええよね。

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なので以下はBPPに絞ります。

毎年9月からシラバスが改定(?)されるのに合わせてバージョンが更新されるため、受験時期とシラバスの改定状況を勘案して購入してください (個人的にはあまりこだわらずに常に最新版を買ってしまっても差し支えはなさそうな気がしますが、ご注意を)。現に僕は2021年9月以降用の教材で3科目勉強しました。

以下が注意点です。

  • テキストは500ページをゆうに超えるため、通読するのは完全に時間の無駄です。しかも情報量が多すぎて身につかないです。これは海外の先達がみんな口を揃えているので、守りましょう。絶対に通読しないこと。通読したいなら将来棺に入れてもらいましょう。
  • 問題集は解ける問題を何度も繰り返し解かないように気をつけてください。少なくとも初期の科目は、Over-learning(過学習)が必要なほど合格ラインが低くはないため、解法や知識を必ず100%に保っておかなければいけないとは考えられません。
  • 解説は超重要です。

なお、すべて電子版と紙が用意されていますが、紙は送料が高いのと、短期決戦のせいで配送を待っていたら試験日が来てしまうため、仕方なく僕はすべて電子版にしました。 Amazonでも科目によっては紙版を売っていたりしますが、取り扱い科目が少なすぎて無理です。取り扱いがあっても海外からの発送だったりします。

BPPの場合電子テキストはPDFではなくて専用のソフトウェアで閲覧する仕組み(iOSアプリもあり)になっています。 Apple Pencilで書きこんだりもできるんですが、閲覧モードでないとページがめくれない点や、書き込みモードと閲覧モードの切り替えが面倒な点から、実用性が厳しいという残念な仕様です。

そこで、2科目目のFAのときに、iPadで各ページのスクリーンショットを撮って、PDF化し、GoodNotesで書き込む手段に行き着きました。 PDF化の作業に小一時間はかかるのが難点ですが、これを始めてから学習効率が格段に上りました。書き込んだり消したりを気軽に繰り返せるので、特に問題演習への効果抜群です。 むしろもう紙版は非効率なので要らないなという気分です。はじめからPDFで売って欲しいんですが、そんなことしたらネットにアップロードされちゃうでしょうね……。

3. 最強セット(OpenTuition + 問題集)

Redditでも言われていて、僕も試して確信しましたが、上記の2つを組み合わせるのが今のところ最適解です。

OpenTuitionの教材が浅いのを逆手にとって、さっくりとインプットを終えて、BPPやKaplanの問題集の演習をメインに行うやり方です。
僕は、OpenTuition + BPPの問題集でFAとMAをクリアしました。それぞれの内容は既に書いたので、僕がどう勉強したかだけ記します。

  1. まず、OpenTuitionの講義動画をテキスト片手に複数チャプター見ます。字幕が頼りです。チャプターごとにPractice問題(5問程度)があるので解いておきます。
  2. ある程度のテーマの塊のインプットが済んだら、BPPの問題集を解きます。本来はインプットする度に問題を解けるといいんですが、教材がリンクしていないのでそれができません。講義一チャプターを終えてすぐに問題集を解こうとしても、解ける問題と未知の問題が混在していて、無意味な選り分けが求められてしまいます。
  3. 問題集は、個別問題とMulti-task questionsだけ一周して、解けなかった問題だけできる限り2回目・3回目まで解きました。3回解いても間違えた問題は試験直前に読み返そうと思って印をつけましたが、結局読み返しませんでした。そのくらい適当でも75-80%は得点できたので、ある程度仕上がるラインなんだと思います。
  4. とはいえ問題集の回答解説は重要なので必読です。ここでインプットの不足を補えます。解説が親切でなかったりして、イラつくこともありますが、この解説を理解することで合格が着実に近づきます
  5. Mixed Banksは余裕がなかったので、全く解きませんでした。個別問題と総合問題の中間なので、重要度は落ちると思います。演習の幅を取りたい方向けのオマケですね。
  6. Multi-task questionsは大切。ここに出てくるテーマは重点的に学習する。FAでいえば、キャッシュ・フロー計算書と連結会計
  7. Mock Examsは解きませんでした。解く場合には、一通り学習した時点で一問解いて、試験前の仕上げにもう一問解いて確認しておくような運用でしょうかね。Mock Examの一問目は丸々ACCAの公式Specimenなので、ここで特よりは公式で解いた方が、本番と形式が似ていていいかもしれません。ただ、その場合は本番同様正否を記録できないので、問題を解きっぱなしになってしまいます。

なお、OpenTuitionのテキストはほとんど読み返しませんでした。 MAでは原価計算など問題集を解いて解説を読んでもピンとこないところだけは、まだそのステージに行けてないということでOpenTuitionのテキストを読み返しました。

4. まとめノート的な

どうしても間違える項目や、覚えなくてはいけない公式などはどこかにまとめておくと良いです。 ただ、試験前にさっと読み返せる分量にしておくのが良い気がします。 まとめノートを作るくらいなら問題を解いた方がいい、という考え方もあるでしょう。

僕はSlackのようなチャットツールにメモったり、画面をキャプチャして貼り付けたりしておきました。

最後に

LWは免除があるので、あえて放棄して受験するか飛ばすかは未定ですが、その次はAAとTXかなと考えています。 ここからはQuarterlyなので、次は9月の試験です。ロンドンで受けることになる予定です。向こうでバタバタだったら受けないかも……? とにかくペースはかなり鈍化します。