Literary Machine Nº9

文学と音楽、ロンドンの陸地で溺れる税理士

Entries from 2022-01-01 to 1 year

去り際に屁をこくように in the UK - 1話

日本に帰任する日が刻々と迫っている。いざ英国から放逐される段になって、一年半の間「ギグを観るほかは引きこもってYoutubeだけを観ていた」という極めて辛い事実に直面し、これはまずいと焦りはじめた。そういうわけで、帰朝までのわずかな残り時間でさん…

炎上し油を注ぐソクラテス ―宇佐美りん『推し、燃ゆ』

戦乱で消失し今ではわずかな断片しか残されていないニオイア派哲学者アナクサマンドロスの『断片』によれば、ソクラテスが一部アテネ市民から熱狂的アイドルとして人気を博すなか、これを妬み嫉んだ他の多数の市民たちから叩かれ、遂には「青年たちをかどわ…

芥川賞受賞作一覧(Kindle)

166回 (2021年) ブラックボックス作者:砂川文次講談社Amazon 165回 (2021年) 貝に続く場所にて作者:石沢麻依講談社Amazon 【第165回芥川賞受賞作】彼岸花が咲く島 (文春e-book)作者:李 琴峰文藝春秋Amazon 164回 (2020年) 推し、燃ゆ作者:宇佐見りん河出書房…

ウーバーイーツで余計なおまけが付いていたとき、ソクラテスならどうするか

今日のランチにウーバーイーツ(厳密にはDeliverooというサービス)を頼んだら、おまけが付いていた。注文したのはDishoomという英国随一に美味いインドカレー屋だった。この地ではまだ大してカレーを食べていないから偉そうに言えたものではないが、先日初め…

他人の金でする賭博は楽しいか

既にほとんど解決し、語られ尽くした感のある4,630万円の誤振込についての備忘をいまさら書こう。税理士であることを忘れないためにも。 今回の国税徴収法に基づく差押えはかなり強引で、差押処分について行政訴訟を起こされるリスクがあったはずだ。もちろ…

Kindleを忘れかけたこと

先月、日本に一時帰国していた間にKindle Paperwhiteの第11世代を買った。英国でも買えるのにどうしてわざわざ日本で買ったのか。消費税を含む値段以外の理由はない。今回は奮発して公式のカバーと保護シールも購入した。 そんな買ったばかりのKindleだった…

村田沙耶香『コンビニ人間』(ネタバレ感想)

コンビニ人間 (文春文庫)作者:村田 沙耶香文藝春秋Amazon ここイギリスには日本のような24/7のコンビニがない。夜中に腹が空いても弁当やパンを買いに行けない。いや、日中でさえあれほどのクオリティの食事は気軽に手に入らない。 そうして、コンビニ渇望症…

日本語のこと: 「に」or「へ」

最近、ある部下のメールをいくつも書き直していてふと気がついたことがある。助詞の「へ」を「に」に直すことがあまりにも多い。もちろん「へ」が適切でないと感じたからこそ修正したわけではあるが、同時に、自分のなかでこれらの違いがはっきりしていない…

ネイティブの英語が聴き取れません(2022年の抱負)

かつては毎年目を輝かせながら目標を練り上げていた僕も、この歳にもなると新年の目標について卑屈にもなってくる。 2021年は生きてイギリスにやってきて、餓死せずに生き延びた。それだけで充分なのだ。事実、神経を多少病んだが、肉体は一応支障なさそうに…