Literary Machine Nº9

文学と音楽、ロンドンの陸地で溺れる税理士

UKに飛ぶ税理士が、英国勅許公認会計士(ACCA)を目指してみる

昔からblogが続かない病気にかかっているので、もう文字数とか気にせず、書き散らすことにします。

AIがどうこう言ってましたが、この5月からACCAの勉強を開始しました。もちろん、データ分析のための勉強を全くしていないわけではないのですが……。そちらの状況はまた別の機会に。

ACCAをやる理由

ACCA英国勅許公認会計士というUKの会計資格です。ACCA(公式)は、"Association of Chartered Certified Accountants"の略で、協会名なわけなので、これが会計士というのは厳密には誤りなんですが、そんな細かい話はさておき、勅許っていう響きが渋いですね。その響きに惹かれてしまったところはあります。

もうすぐUKに行く僕、現地税制について事前に概略を勉強しておきたいなと思って色々調べていたところ、なかなか手ごろな本がない。そんななか、ACCAなる資格の存在を知り、渡英前の謎のテンションに乗せられてまんまと勉強開始してしまったわけなのだ。

ちなみに、13科目あるからね。えぐい。

実は昔USCPAが少し気になった時期がありまして、、ただ受験資格の兼ね合いもあってアビタスの受講料が70万円くらいして高いとかのせいでUSCPAに舵は切らなかったんです。 (何年も前に予備試験・司法試験のために伊藤塾に100万円くらいお布施して結局どぶに捨てたのは内緒)
どうせならUSCPAの方がいいのかなぁとか今回改めて悩みましたが、悩んだ挙句、ACCAにしました。
なお、USCPAを取るとACCAの13科目のうちなんと8科目が免除になるのでUSCPA -> ACCAルートを取る人もいるらしいです。

ACCAの勉強

ACCAは受験資格がほぼ皆無(4年制大卒であれば)なのがUSCPAよりもとっかかりやすいところ。 ただ、受験するためにはStudent登録が必要で、それに£89かかります。1.4万円くらい。安からず。

とりあえず登録が終わって、myACCAというポータルサイトを見たら、1科目終わったことに!

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myACCA
そう、専攻によっては免除される科目があるんですよね。僕の場合LWという法律系の科目が1つ免除されたというわけです。 ただ、免除で通してしまうと合格してから登録するための実務要件に差し障りがあるから放棄するかという謎のメールが来ました……。 まだこの辺りの仕組みが理解できてないです。

そもそも実務要件が36か月なんですよね。 税理士の2年より長いし。36か月は満たせないかもしれないし、向こうでの仕事は計算に入れられるものかもわからないし、そもそもある程度やったら満足するかもしれないし。
とりあえず教養と思ってやります。

今はBusiness Technologyというザ・教養という感じの科目をまず受けようと思って勉強しています。 会計の役割みたいな話だけでなく、経済学とかマネジメント・リーダーシップの話とかMBAとかでやるような話のかなり初級レベルも広く触っていくイメージ。 進捗はGWの1週間でinputでいうと8割近く終わったので、あとは演習を頑張れば、今月中に受験できる気がします。 この科目の合格率なんと85%くらいあるから! 余裕でしょう。これ受かってから渡英したい。

所得税基本通達59-6改正の余波 第2回「通達59-6の読み方」

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今日も通達改正を機に話したいことをべらべらと書いていきます。 前回は所得税法59条(みなし譲渡)についてでしたが、第2回である今回は59条に関連して「個人が株式を売買するときの時価」を算定する際に実務上非常に重要な通達59-6の読み方を解説をしてみます。 法人税基本通達9-1-13や9-1-14とも基本的な考え方は同じですよ。

第1回「みなし譲渡」の記事はこちら shivalak.hatenablog.com

2. 改正前の所得税基本通達の定め

以下、改正前の通達ベースで説明します。

2.1. 所基通59-6前段

所得税基本通達59-6の前段には下記のように記載されています。

<所得税基本通達59-6 前段>
法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。以下この項において同じ。)である場合の同項に規定する「その時における価額」とは、23~35共-9に準じて算定した価額による

59条1項の適用に当たって、株式の時価は23~35共-9に準じて算定するとあるので、そちらへジャンプします。

2.2. 所基通23~35共-9

所得税基本通達23~35共-9は本来みなし譲渡とは異なる規定の適用に当たって、株式の類型別に時価の算定方法を定めたものです。知らない条文番号や文言が入っていますが、準用しにやって来ているので、その辺はあまり気にしなくてOKです。

<所得税基本通達23~35共-9 本文>
令第84条第3項第1号及び第2号に掲げる権利の行使の日又は同項第3号に掲げる権利に基づく払込み若しくは給付の期日(払込み又は給付の期間の定めがある場合には、当該払込み又は給付をした日。以下この項において「権利行使日等」という。)における同条第3項本文の株式の価額は、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

この「次に掲げる場合」として下表の4類型が挙げられています。

<59-6の株式の類型>

# 株式の類型
(1) これらの権利の行使により取得する株式が金融商品取引所に上場されている場合
(2) これらの権利の行使により取得する株式に係る旧株が金融商品取引所に上場されている場合において、当該株式が上場されていないとき
(3) (1)の株式及び(2)の旧株が金融商品取引所に上場されていない場合において、当該株式又は当該旧株につき気配相場の価格があるとき
(4) (1)から(3)までに掲げる場合以外の場合

いわゆる非上場株式であれば(4)に従うわけなんですが、(4)はさらに下表の4類型に分けられています。

<59-6(4)の非上場株式の類型>

# 非上場株式の類型 時価の算定方法
売買実例のあるもの 最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額
公開途上にある株式で、当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出し(以下この項において「公募等」という。)が行われるもの(イに該当するものを除く。) 金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われるブックビルディング方式又は競争入札方式のいずれかの方式により決定される公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
売買実例のないものでその株式の発行法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの 当該価額に比準して推定した価額
イからハまでに該当しないもの 権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

非上場株式といえども売買実例がある場合にはその価額を使うべしという点は留意が必要です(価額が適正な場合に限られるため、これはこれで揉めたりします)。

しかし、実際はイの売買実例もなければ、ロの公開途上でもなく、ハの類似する他の法人の価額も得られないというケースがほとんどだと思います。 よその似た会社の非上場株式の時価を入手できる見込みなどありません。 街を歩いていて、「私とあなたは背格好が近いですね。参考までにあなたの年収はいくらですか?」 と訊かれて答えますか、ということです。

したがって、非上場株式の時価といえば、基本的には23~35共-9(4)二に該当すると思って差し支えありません。 「純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」というのは、会社の資産・負債をすべて清算価値である時価に置き換えて評価する方法(「時価純資産価額」といわれます)をベースに算定しなさいということです。 詳細には立ち入りませんが、基本的に税務上算定される時価としては高くなりがちです。

59条のみならず、非上場株式の「税務上の時価」というときにはこの時価純資産価額が根底にあることは頭に入れておきましょう。

これで非上場株式の時価が見えてきました。とはいえ、我々が知りたいのは、59条適用時の非上場株式の「税務上の時価」です。59-6に戻りましょう。

2.3. 所基通59-6後段

今度は所得税基本通達59-6の後段を見ます。

<所得税基本通達59-6 後段>
……この場合、23~35共-9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」<とは、原則として、次によることを条件に、昭和39年4月25日付直資56・直審(資)17「財産評価基本通達」(法令解釈通達)の178から189-7まで(取引相場のない株式の評価)の例により算定した価額とする。

これを読むと分かりますが、一定の留保条件(4条件として次項で説明します)を満たしたときには、

純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
= 財産評価基本通達178~189-7の例により算定した価額

として、財産評価基本通達ベースで非上場株式の時価を算定してよいということです。 右辺を左辺に代入するイメージです。

ここで財産評価基本通達の解説はしませんが、59-6に従い23~35共-9に準じて評価するときは、評価額に類似業種比準価額をブレンドする余地が出てきます。 基本的に、類似業種比順価額をブレンドできる≈評価額(時価)が下がると考えて良いので、みなし譲渡の判定上、納税者にとって有利なことが多いのです。

では、4条件とは何でしょうか。

2.4. 所基通59-6後段の4条件

4条件は次の通り定まっています。財産評価基本通達は相続税贈与税の算定のためのものであって、これをそのまま適用すると不都合を生じかねないので、一定のケースごとに財産評価基本通達の内容を書き換えたり制限して評価せよ、というものです。

<所得税基本通達 59-6 後段(4条件)>

# ケース 書き換え・制限
(1) 財産評価基本通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうか 株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定する
(2) 当該株式の価額につき財産評価基本通達 179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、株式を譲渡又は贈与した個人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するとき 当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例による
(3) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているとき 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については、当該譲渡又は贈与の時における価額による
(4) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算 同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しない

(3)や(4)は書いてある通りなので飛ばしますが、(3)の土地の時価への置き換えは、例えば路線価ベースでの評価額を80%で割り返すことが多い気がします。これは路線価が公示価格の80%程度になるように設定されていることから、割り返しによって公示価格=市場価格により近い時価に変換できるという理屈です。実務界隈ではこれが王道だと思います。

このうち改正の機縁となった事件では、(1)の解釈が争点となりました。

3. 論点(所基通59-6(1)の問題)

次回紹介する最高裁判決でも問題となり、今回改正された通達は、上記4条件のうち(1)の部分だったのですが、これは財産評価基本通達188に関連するものです。 そこで、何が問題なのかを確認しておきたいと思います。視点を転じて相続税贈与税の世界の話から見ていきます。

3.1. 相続税贈与税

財産評価基本通達は、非上場株式の時価は原則として類似業種比順方式や純資産価額方式によって評価するように定めていますが、同通達188は、「同族株主以外の株主等」(ざっくりと少数株主です)が相続や贈与により取得した非上場株式については、特例的に配当還元方式によって評価することとしています。過去数年の配当実績だけで算定するため、この配当還元価額というのはたいてい激安な評価になります。原則的評価と比べると、百貨店と百円ショップくらい金額が違います。

そして、この「同族株主以外の株主等」に該当するかどうかの判定は議決権ベースで行うこととされており、誰の議決権で判定するかというと、株式の取得者(相続人や受贈者など)を基準としてその親族などの議決権も加味して判定することとされています。 (詳細の判定方法はフローチャートなどがネット上にありますのでググってください)

これは、事業や経営に携わる機会や影響度が少ないであろう少数株主などが取得した株式の価値は、その取得者にとって単に配当を期待するものに留まるであろうことや、類似業種比順方式や純資産価額方式による評価を行うための資料の入手が困難であることなどを考慮したものです。

3.2. 所得税

一方で、これまで見てきた所得税の世界に視点を戻すと、所得税法59条は譲渡所得に係る特例的な規定でした。時価で売買していないのに、時価で売買したとみなして課税される譲渡が規定されているのでしたね。

そもそも譲渡所得というのは譲渡者が資産を保有していた期間の値上がり益(キャピタル・ゲイン)に対して課税するものです。とすると、相続税贈与税とは異なり、その株式を所有・保有していた譲渡者を基準として配当還元方式により評価できるかどうかを判定することが妥当なように思えます。 実際、上記2.で解説した59-6後段の4条件の(1)では「財産評価基本通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうか」は、譲渡者の譲渡直税のステータスで判定すると定められています。

しかし、財基通188は(1)から(4)まで議決権のパターンを用意しているのです。にもかかわらず、所基通59-6(1)は財基通188(1)だけしか言及していません。

「4条件の2つ目も188(2)とあるけど、関係ないの?」という疑問が生ずるかもしれませんが、これは(2)の「中心的な同族株主」に該当した後の制限なので、判定に関するものではありません。

通達を法令のように忠実に解釈していいのかという疑問はさておき(次回触れます)、通達の書きぶりだけを気にするとこのような整理になりそうです。「<-」は準用と思ってください。 なお、判定者は納税者と連動するため、解釈の余地はありません。

税目 通達 「同族株主以外の株主等」の判定者 判定時点
相続税贈与税 財基通188(1)~(4) 取得者(相続人・受贈者等) 取得後
所得税 所基通59-6(1) <- 財基通188(1) 譲渡者 譲渡直前
所得税 所基通59-6(1) <- 財基通188(2)~(4) 譲渡者 譲渡後?

しかし、本当にそれでいいんでしょうか……? 改正の機縁となった事件では、財基通188(1)に該当しうるケースではなく、188(3)に該当しうるケースでした。そこで、納税者はこの表と同種の主張に基づき、譲渡後の議決権に基づいて判定を行うのだと主張しました。

なぜ争ったかといえば、譲渡後なのか譲渡直前なのかで、激安の配当還元価額を使える・使えないかの分かれ目になったからです!

この点については最高裁判決を交えて次回説明します。

所得税基本通達59-6改正の余波 第1回「みなし譲渡」

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税務界隈に激震が走っています。

ちょっと盛ってます。

というのも所得税基本通達59-6の改正に当たって出されたパブコメの結果公表に「えっなにそれ……それじゃうちら間違ってたんじゃん」っていう実務家勢ぶん殴り系のハンマー攻撃が含まれていたからです。改正自体は極めて妥当だと思うんですが、なんか余波がチクチクする超音波だみたいな、明後日の方角から槍で刺されたことのある人なら分かる、アノ感覚です。

ということでその改正のきっかけとなった最高裁判決の紹介や非上場株式の時価の算定方法について、横断的に解説したいと思います。

が、所得税法59条の解説から始めたら最高裁判決はおろか59-6にすら辿り着けなかったので、本筋となる続きは次回からということで……今回は導入部です。

所得税基本通達23~35共-9と59-6(および法人税基本通達9-1-13と9-1-14)の関係の話は、僕自身が事務所に入ったばかりの月に早速アサインされた株価算定業務の際にだいぶ悩まされた記憶があります。重要でありながら、試験勉強では聞かない話だと思います。

税理士試験受験生や税務1年目の方にも読んでいただきたいという気持ちです。

1. 所得税法59条1項について

1.1. みなし譲渡

所得税法59条1項は、個人が法人に対して資産を贈与又は低額譲渡したとき等に、時価による譲渡があったものとみなす規定です。 これにより、その資産の所有期間中における値上がり益(Capital Gain)について,所有者であった個人に所得税が課されることとなります。

低額譲渡というのは、「著しく低い価額による譲渡」なのですが、政令(所得税法施行令169条)において時価の1/2未満とされています。 つまり、59条1項は個人が法人に対して、時価の1/2未満(0を含む)の対価しか受け取らないで資産を譲渡したとき、時価相当の対価を受け取ったものとみなして課税する規定だといえます。

要するにみなし譲渡課税を受ける対価xの範囲はこれ。

0 \leq x \lt 時価 \times \displaystyle\frac{1}{2}

所得税法は、原則として収入として実現したキャピタル・ゲインについてのみ課税する(実現主義)のですが、この規定はその例外を定めたものです。 無償譲渡の際に時価に置き換えて課税するということは、収入として実現していないキャピタル・ゲインに対してフルに課税することを意味します。

例えば、ある人が時価1億円の何らかの資産を会社に贈与したときに「金はもらってねぇんだから課税なんかされねぇべ」っていうのは通用せず、1億円で売ったのと同じ取り扱いがなされます。 この人は鐚一文受け取っていないのにもかかわらず、課税されることになってしまい、納税資金の問題が湧出したり、不公平感もMAXです。

実現主義に反しているじゃないか、という声も聞こえそうですが、資産の値上がり益という未実現の利得が原則として課税されていないのは、立法政策上そうされているだけであって、性質としては所得であるのだから、例外的に課税することは全く問題ないという形であっさり斬り捨てられます。

そういうわけで実務上はみなし譲渡課税は避けられます。Tax Avoidanceではなく、時価に応じた対価をきちんと設定するということです。

1.2. 沿革、みなし譲渡という名

少し横道に逸れます。

この59条の規定の歴史は長く、シャウプ勧告に基づいて1950年に制定されたのですが、当時の税制改正の解説において、趣旨が記されています。

時価よりも低い価額で譲渡した場合で、その程度のはなはだしいもの、すなわち時価の2分の1未満で売つたような場合には、その時価によつて譲渡所得の計算をするということにして、租税の逋脱を防止しておるわけであります。」

その後も改正が重ねられていますが、トレンドとしては、適用対象となる資産の移転が狭められています。 過去の範囲は所得税基本通達60-1の(表4)に一覧としてまとめられています。 美意識の高い方は、フォントのあまりの汚さに思わず嘔吐してしまうかもしれません。閲覧注意。

この59条、法令集などで見出しを見ると「贈与等の場合の譲渡所得等の特例」とありますが、一般には「みなし譲渡(課税)」と呼ばれます。 へその曲がった人は「この規定は譲渡があったものとみなすのではなく、時価による譲渡があったものとみなすのだから、いってみれば『時価みなし譲渡』が適切なのだ」と言うかもしれません。 どうぞ無視してください。そういう輩は。

(時価による譲渡があったものと)みなす譲渡、だからみなし譲渡で良いと思います。

1.3. で、時価はいくら?

さて、この規定で重要なのは、結局時価はいくらなのかということです。みなし譲渡課税の裏を返せば、時価の1/2というトリガー以上の対価で譲渡する限り、実際の対価を以て課税されてストーリーが完結します。 時価への置き換えなどという蒸し返しは生じないということです。

しかし、時価が分からなければ、どこに向かってボールを投げればいい(時価で課税されない)のかが分かりません。

時価といえば、例えば上場している株式であれば日々の多量の取引によって形成される価格があるので、時価(客観的な市場価値)らしいものが容易に取れそうです。 税務上も上場株式であればこれを時価と認めるのですが、取引相場のない株式(以下「非上場株式」という)の場合には客観的な市場が存在しないのが難点です。

すべてを見通せる神の視点に立てば、一回も取引されたことのない株式の本源的・イデア的な価値が分かるかもしれませんが、納税者はもとより、お上といえどもそんな価値は出せません。お上 is not お神。 そのため時価が争点となりやすく、今回の通達改正の機縁となった事件においても、非上場株式の時価が納税者と国税との間で争われました。

1.4. 時価争いのインパク

時価についての争いによって何が起こるかといえば、みなし譲渡の要件(トリガー)と要件を満たしたときの効果(時価課税)の双方を変動させます。 例えば、個人株主が会社の株式の時価を8億円と評価して、他社との間で時価の1/2の価額である4億円を対価として売買をし、4億円の20%である0.8億円*1を納税したとします。

しかしこれについて税務調査があり、当局から計算誤りがあって時価は10億円であるという指摘を受け、これを認めたとします。 すると、時価の1/2の価額は5億円であるということになります。売買の対価が4億円であったのは事実ですから変わりません。 したがって、時価の1/2未満の価額で譲渡していたという扱いになって、時価である10億円の20%である2億円納税すべきであったということになり、1.2億円+ペナルティの追加納付が生じます。

なお、要件から明らかなように、当初から納税者が自ら算定した時価を対価xとしていた場合であっても、後々指摘される時価が対価xの2倍超になってしまうと、みなし譲渡課税が起こります。

0 \leq x \lt 時価 \times \displaystyle\frac{1}{2}

0 \leq 2x \lt 時価

後に紹介する最高裁判決に係る事例では、納税者の算定した1株あたり75円から当局による計算で2,505円に激増しているので、2倍などというチンケなレベルではありません。余裕のみなし譲渡課税です。

このように時価の帰趨によって、後から多大な追加納税額が発生しかねないため、時価の算定が非常に重要なわけです。

そこで疑問が生じます。 「その時価はどうやって算定するんですか?」

対象資産が株式である場合の時価の算定方法は、まさに今回改正された所得税基本通達59-6等に定められていますので、次回はその解説をしたいと思います。

*1:税率は簡素化し、取得費等を考慮せず対価=キャピタルゲインとしています

数弱ちゃんのここまでの流れと9月の予定

緊急事態宣言下で引きこもって仕事していたら急にデータサイエンスに興味を持ち始めた男、ろきんです。 税理士がAIに負けるなら、AIに降ればいいじゃないのという発想でおります。 出会って3秒で土下座して寝返るのがDX時代の処世術と信じてる。

トチ狂ってからの流れを振り返るとこんな感じ。

5月

仕事の都合でVBAを勉強しようと思い、Udemyを始める。Python良さそうじゃんとか。テレワークが心地良すぎて、在宅ジャンキー化が止まらない。永遠のテレワークを目論むうちに、最もsexyな職業に選ばれたデータサイエンティストに興味を持つ。sexyには目がないからな、僕は。

Udemyのキカガクの講座で機械学習の実装体験をして、おもしれー!ってなる。

6月

統計学をちょろちょろ勉強し始めるが、数弱のままでは浅瀬での水遊びしかできないという現実に直面した。その限界はデータサイエンスも同等かそれ以上に凶悪であると思い知って絶望しかける。

データサイエンティストには2種類あるらしいんだ。

  • 大京大理系院出身で、遠洋漁業でマグロ釣ってる優秀なデータサイエンティスト
  • データサイエンティストと名乗っているが、釣り堀でワカサギ釣ってる雑用の人

前者は無理だし、後者は厭だ。おれにも沖合でイワシくらいは釣らしてくれよ!

Khan Academyという学習サイトのおっさんの授業がことに面白く、数弱のくせに血迷って数学(Algebra)を開始。 中学レベルの代数学からなのでさすがに結構分かって楽しかった。英語のリスニングの勉強にもなるし、とか。 そして7月にかけてAlgebra 1と2を終える。やればできるかも?という感覚を得る。

7月

ディープラーニングG検定を受ける。Google検索力検定という異名は伊達じゃない。合格してました。

数学をガッツリやることを決意し、高校数学のカリキュラムに移行。数学IAから地道に始める。因数分解くらいは覚えているもんだね。 完全独習は辛かったので、無料公開されているトライイットのわけぇ兄ちゃんの動画で学ぶ。三角比と愛し合う夢を見る。 理解すればいいか〜と軽い気持ちだったけど、問題演習をしっかりこなさないと理解や知識の定着ができないと思い、参考書迷路にin。 なんとなく黃チャートを買ったり、基礎問題精講(これ武田塾とかいうところがガチ推ししているけど解説が「強い人向け」じゃん)を買ったりしたが、演習から逃げてトライイットの動画を優先していた。

8月

参考書の迷走が続くが結論、マセマ+青チャート+坂田アキラ路線で行くことにした。 トライイットの数学IIBを終えて、生まれて始めて文系数学の範囲を把握。数学IIBはおじさん講師なんだけど、Youtubeのコメント欄に「この先生分かりやすくて好き。長生きしてねおじいちゃん」ってあってビビる。 おれの親より若いぞこの先生、……ってことはおれの子供でもおかしく……ない計算? いや計算苦手なんだよ。おれ。

「文系だから数学はね……」と言い訳している輩は世に溢れていて、僕ももう2万回吐いた台詞だけど、文系数学ですら結構範囲広いし大変という事実に泣きそうになる。 お前ら文系と言い訳しながらベクトルとか知ってたのかよ……と誰かに裏切られた気分になりつつ、自分が文系未満の数弱雑魚ピだったことにようやく気がつく。 青チャートの数学IAをなんとなく一周。ただし図形、テメーはだめだ。

マセマ(はじはじ)の良さがわかり始める。おれのような「弱い人」の手に馴染むんだな。馬場敬之の話し口調のクセの感想が「うわっ気持ち悪いおっさんだな」から「このおっさん嫌いじゃないよ(好きかも)」に変わる。 積分が解けるようになったのが一番嬉しいかも。インテグラルっててっきり寄生虫だと思ってたけど、解けると積分楽しいね!」状態。 その一方で当初の意気込み・勢いが落ちてきて、一週間くらいビジネス書の読書に逃避してしまう。「これもタメになるから」それ、逃避だよ。

9月

数学IAの復習を青チャートでやりつつ、IIBは坂田本で論点ごとに学習していく予定。 来月10月には数学検定2級を受ける。範囲が数学IIBまでなのでこの数ヶ月の学習効果を測定するのに丁度いいはず。 少し数学が身についてきて、統計学もやる気になったので統計検定2級もどこかでCBTで受けよう。

10月からは、MLとかを学習させてもらえる会社のプログラムに参加できることになったので、本腰入れてがんばりまする。それまでは基礎・基礎。